<北欧一人旅前回の記事>
朝4時半に目覚めて僕はのそのそと起き上がり、まだ暗い部屋をこっそりと抜け出し、気温が7度しかない陽もまだ昇らぬオスロの街に出た。
背中にはこの旅の全ての荷物を背負い、腰にはウエストポーチ。もう一つのトートバックの中には水とスーパーで買ったパンが詰まっている。重たい。
目指すのはオスロ中央駅。ここから3kmもある。
トラムの駅を見つけた。
が、残念なことに事前に調べたダイヤと実際のものが異なっており、始発まで30分も待たなくては行けない。ただでさえギリギリの状態で凌いできた北欧一人旅。ここまで風邪を引いていないのは奇跡だ。意を決して少し離れた地下鉄まで歩くことにした。
本当に誰もいない。ただ僕の足音が、しーんと静まり返った路地に響くだけ。
男一人。明け方のオスロを歩く。
歩く。歩く。歩く。そしてようやく駅に到着。
やはり誰もいない。本当に電車が来るのか心配になったが、思いの外すぐに来た。
行き先が心配で駅員さんに聞いたら、これで大丈夫だと教えてくれた。
10分後、オスロ中央駅に到着。ホームが凍えるくらい寒い。中に入ろう。
時刻表を確認。まだ時間がある。
さて、これから僕が乗ろうとしているのはベルゲン急行だ。それとフロム鉄道と船を乗り継ぎ、12時間に及ぶフィヨルドの旅に出る。
フィヨルド。地理を選択していた人なら分かるだろう。
氷河によって削られた入江のことだ。今からそれを見に行く。
ノルウェーには世界一有名なフィヨルドがある。その名はソグネフィヨルド。
高校の地理で初めてその写真を見て以来、死ぬまでに絶対行こうと心に決めた。
これからその絶景に会いに行く。ぶるっと体が震えた。
さて、今回はNorway in a nutshellでフィヨルドツアーを予約した。
飛行機、コペンハーゲンカード、そしてこのツアーの予約も全て英語のサイトで行った。これはちょっと疲れた。
実は昨日のオスロ観光の際、オスロ中央駅で予約したコードを入力して、チケットをカウンターでもらっていた。
スケジュールはこんな感じ。
06:25 オスロ出発 byベルゲン急行
11:37 ミュルダール到着
12:13 ミュルダール出発 byフロム鉄道
13:10 フロム到着
13:30 ソグネフィヨルドツアーへ by 船
15:30 グドヴァンゲン到着
15:40 グドヴァンゲン出発 byバス
16:55 ヴォス到着
17:41 ヴォス出発 byベルゲン急行
18:55 ベルゲン到着
といった感じだ。ちなみにそれぞれの街の位置はこんな感じ。
総移動距離400km以上の大冒険だ。さて、この12時間に及ぶ旅を一人で無事終えることができるだろうか。4時半起きで眠い目をこすりながら、入念にスケジュールを確認した。
駅のコンビニで食料を買う。持ってるパンが味気なすぎるので華のあるものを買いに来た。が、高い。日本の倍はする。
パンとコーヒーのセットがそこそこ安かったのでそれにした。
パンとコーヒーのセットで25NOK=350円
何と言っても北欧はコーヒー大国。こいつを飲まなききゃ1日が始まらねえ。
ホームに戻ると電車が到着していた。チケットを入念に確認し、さらには駅員さんにまで確認して乗車。もしこれが間違っていたら全て台無しになる。ミスは許されない。
座席を見つけて座る。席の上に荷物を入れるスペースもあり、充電もできた。さらにWiFiも飛んでいるのでめちゃめちゃ助かった。さすが北欧だ。
コーヒーとパンでホッと一息。
お昼のためにこのよく分からないサラダらしきものも買った。対して大きくもないのに800円もした。高すぎる...
そして時刻通りに電車が出発。さあ、冒険の始まりだ。
20分も走ると都会の面影はすっかりなくなり、山々が延々と続く。
隣にいたシンガポールから来た親子と仲良くなった。
息子が全て手配して、連れて来てくれたらいい。なんていい息子なんだ。
シンガポールも物価は高い方だが、ノルウェーの方が抜群に高いらしく、昨日もスーパーで済ませたと言っていた。やっぱり高いよね。
電車はどんどん進む。ノルウェーはいたるところに湖があり、いくつもいくつも通り過ぎていった。
しばらくすると山肌が見えるようになって来た。綺麗だ。
天気は快晴。秋の北欧では珍しい。よかったよかった。
遠くに雪も見えるようになって来た。外の気温の表示は7度。やっぱり寒い。
ちなみに車内に売店もある。高いけどね。
どんどんと電車は進む。5時間にも及ぶベルゲン急行の旅。だが外を見ていても全く飽きない。日本では見られない山の見せる表情に、ハッと息を呑んだ。
途中、駅で10分停車した時があり、外の空気を吸いに出た。
うう...寒い。
駅にはレンタルサイクルがあったりした。標高はいつの間にか800mくらい。山をサイクリングする人がいるのだろう。世界って広いな。
再び電車に乗り、山の間を走り抜ける。オスロ中央駅で買ったサラダらしきものを食べる。美味しい。
そして5時間の長旅を終え、ミュルダールに到着。標高866m。
ここで1時間待つ。幸い駅の中に待合室があったので温まることができた。
ちょっと休んで外を散策。
ノルウェーの、しかもオスロからどれだけ離れたかも分からない山の駅のホームに一人立つ。
この光景を見ただけで、本当に旅に出て良かったと思った。美しい。
ここにもレンタルサイクルを発見。いったいどんなルートでサイクリングするんだろう。
駅にはカフェもある。
時刻表を入念に確認し、ホームの反対側へ。
泣いちゃいそうなくらい綺麗だよ。綺麗。なんだこれは。
気がつくと寒さもいつの間にか気にならなくなり、夢中でカメラを回した。もしかしたらこの先、一生ここに来ることはないのかもしれない。そう思うととっても悲しくて、でもここに今立ってることがとても愛おしく思えて、どうにかこの幸せな瞬間を残そうと、写真だけじゃなく動画も撮りまくった。ありがとう。ノルウェー。
1時間後フロム鉄道が到着。これは自由席で、進行方向の左側に座ると絶景が見やすい。そのことは調べて知っていたのだが、電車がホームに侵入して来た方向と逆に走り出したため、右側に座ってしまった。
それでも綺麗な写真はいっぱい撮れた。
そして名物の滝に到着。一旦停車して外に出ることができる。
すごい水しぶきでびしょびしょになった。
しばらくして滝の近くの岩に謎の白装束の女性が出現。う、歌っている?!
水しぶきの激しさで映ってないが、この猛烈な滝の流れの側で女性が歌っていた。こんな粋な演出もあるらしい。ただ滝の音がうるさ過ぎてよく聞こえなかった。ノルウェーの民謡を歌っているとかなんとからしい。
さて、再びフロム鉄道に乗る。
さすがは山岳鉄道。切り立った山々が迫る。
川の勢いも激しい。
うおお。青い空に緑の山。すごい。
小さな村もある。こんな山の中で、いったいどうやって生活しているんだろう。
1時間のフロム鉄道の旅を終え、グドヴァンゲンに到着。
こんなところまで来ちまったぜ...すごいなノルウェー。
さて、ここからは船に乗っていよいよソグネフィヨルドクルーズだ。
ここまででも十分美しい景色を堪能したが、僕が死ぬまでに見たかったあの光景はこの先で待っている。
<続く>