とある九月の夜。まだ暑さが残る日だった。
18時を回ってもまだ汗ばむ。電車から降りた瞬間、むわっとした熱気に襲われた。
改札を出て約束の出口に向かう。
階段を登り地上に出たとき
「これはまずいな」
と思った。
横断歩道の向こう側には、僕が足を踏み入れてはならない世界が広がっていた。
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話は遡ること一週間前、いつものようにTinderでスワイプしていたらある女の子とマッチした。
新宿でバーを始めたという彼女。名前はマツモトミユキと言った。
お店が出来たばかりで、そこで働く店員を募集しているらしい。
過去にバーテンダーのバイトに応募して諦めた経験のある僕はもしかしたらバーテンダーになれるんじゃないかと思い、ぜひ働きたいと声をかけてみた。
話を聞いてみるとバーはバーでもボーイズバーらしい。
ボーイズバーと聞くとなんだか不安だが、とりあえずどんなことをするのか聞いてみると、ただお客さんと会話してお酒を飲むだけということだった。
シフトも自由。暇なときに来ればいい。
しかも時給は他のどんなバイトよりも高いとのこと。
さらに詳しく話を聞くと、
客層は20代後半から40代前半の女性。
しかも立派なところで働くしっかりとした社会人。
働く店員も僕と同じ歳くらいの大学生が多い。
とのこと。
みんな自由に暇なときに働いてお客さんとお酒を飲んで好きな時間に帰っているらしい。
それで高い給料が貰えるならいいじゃないか。おまけに綺麗な女の人とも仲良くなれるかもしれないし。
金と下半身のセンサーが反応した僕はぜひ面接したいですとお願いし、新宿に向かったのだった。