僕の高校の図書館にはなぜか絵本が置いてあって、はらぺこあおむし、かいじゅうたちのいるところなど色々な絵本が置いてあった。
一時期お昼を食べた後に図書室で絵本を読むことにハマってた僕は、意味不明で退屈な授業と泣くほど辛い部活で廃れた心を癒しに足しげく通った。
そんなある日、ふと手にとった絵本があった。
他の絵本とは違い不気味な黒い表紙が、僕の興味をそそった。
作者の名前はエドワード・ゴーリー。聞いたこともない名前だった。
10分後。言いようのない不安に襲われた僕は人のいない図書室の廊下の闇に恐怖を覚え、小走りになって教室に戻った。午後の授業中ずっと、放心状態に陥っていた-
エドワード・ゴーリーは1925年生まれのアメリカの絵本作家だ。高校卒業後、シカゴの美大に入学するがすぐに退学し、陸軍に入隊。工兵隊員として毒ガスのテストに従事したのち、ハーバード大学に入学。フランス文学を専攻した。
その後作家としての活動を開始し人気を博した。数々の賞を受賞しアメリカのみならず世界中で読まれる絵本を残した。本名エドワード・セントジョン・ゴーリー。2000年4月15日に75歳で亡くなった。
そんな人気絵本作家のエドワード・ゴーリーだが、彼の作品は恐ろしいほど残酷な内容だ。初めて読んだ高校生の僕にトラウマを植え付けたほどだ。子どもは絶対に読んではいけない。読めばえーんと泣きでして当分一人でトイレに行けなくなるだろう。僕も18歳にしてそうなりかけた。
先ほど紹介した「おぞましい二人」では二人の殺人鬼が次々と自宅に子どもを招き入れ惨殺した様がありありと描かれている。
ただ淡々と。黒で描かれた影の多い絵がおぞましさを一層引き立てる。その恐ろしさと二人の殺人鬼の非人道さに当時の僕は心底震えてしまった。
しかしどういうわけか、その不気味さ、残酷さに惹かれた僕は次の日も、また次の日も図書室に通い、エドワード・ゴーリーの絵本を片っ端から読んだ。
「ギャシュリークラムのちびっ子たち」ではアルファベット順にひたすら子どもが死ぬ様が描かれた。
「不幸な子供」では両親親族全員亡くなってしまった少女が寄宿学校でいじめられ、逃亡。ならず者に誘拐され人身売買にかけられやがて失明し最悪の結末を迎える様が描かれた。
エドワード・ゴーリーの絵本が他のダークな絵本と違う点は、ハッピーエンドなど存在しないという点だ。どの話も見事なまでに救いがない。いつかこの子も報われるんじゃないかと期待をしながらページをめくるも、次のページでは無残に死体が転がっている。
めくれどもめくれども訪れる不幸に次第に気分が蝕まれていく。それもこの作品の魅力の一つなのだろう。
図書室にあった彼の作品を全部読み終えた時、僕はみてはいけない闇を一つのぞいてしまった気がした。
皆さんも彼の作品を手に取り、形容しがたい不安を味わってみてはいかがだろうか。
- 作者: エドワードゴーリー,Edward Gorey,柴田元幸
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ちなみに9月2日まで八王子市夢美術館で彼の展覧会が開催されている。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。