【考察】キリトかなーやっぱりwwを嘲笑ってはいけない

 

 

僕らは日常的に嘘をついています。ここでいう嘘というものは他者を騙すような悪質な嘘だけではなく、自分の体裁を保つための嘘や、人間関係を円滑にするための嘘も含みます。そうなるとほとんどの人が毎日何かしら嘘をついていると言っていいでしょう。

 

そしてネットには現実世界よりたくさんの嘘があふれています。とくにTwitterではどこの誰かも知らない人のツイートがリツイートで何件もまわってきて、果たしてそれが本当なのか全くわからないまま、僕たちは毎日TLを眺めています。

 

ネットは何者にでもなれる世界です。特にリアルでの知り合いをフォローしてないアカウントは、匿名性を保つことで商社マンを名乗ることも医者を名乗ることも、なんでもできてしまいます。

 

誰かになりすますとまではいかなくても、リアルの友人をフォローしているアカウントで呟く際、事実を誇張して情報を発信することは誰にだってあるはずです。

 

その一例として、#あなたっぽいアニメキャラ のタグで話題になったこんなツイートがありました。

 

 

キリトかなーやっぱりww 自分は思わないんだけど周りにキリトに似てるってよく言われるwww こないだDQNに絡まれた時も気が付いたら意識無くて周りに人が血だらけで倒れてたしなwww ちなみに彼女もアスナに似てる(聞いてないw)  #あなたっぽいアニメキャラ

 

 

このキリトというのはソードアートオンライン(SAO)に出てくる主人公のことです。

 

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アスナはそのヒロインです。

 

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見てわかるように美男美女です。

 

このツイートが話題を呼んだ(悪く言えば炎上した)のは、このツイートをした本人はキリトとはかけ離れた容姿をしているであろうにも関わらず事実を誇張したツイートをしたからに他なりません。

 

 

 

先日読んだ”悪意の心理学”という本で、このようなインターネットの嘘の特徴がわかりやすく書いてありました。

 

 

著者の岡本さんは、インターネットでは対面状況など、日常とは異なった嘘が現れると指摘しています。

 

そしてまずネットの特徴として、以下の点を指摘しています。

 

(i)視覚匿名性

ネットでのやり取りは相手を直接みてすることはありません。つまり相手の身振りや口調が分かりません。そのため自ら名乗らない限り、年齢や性別、容姿なども推測がつきにくくなります。また、発信元が個人とも限りません。複数の人が同一アカウントで情報を発信しているとしても、それに気づくことは困難です。このようにネットではアイデンティティを誤魔化すことができます。

 

(ii)タイプされた文字

ネットでのやり取りは、タイプした文字を通して行われます。情報を発信する人は、メッセージの修正を好きなだけできますし、他人の文章のコピペだってできちゃいます。そしてタイプされたものはネットに残るので、他人が検索してそれを読み、著者の体験を追体験することが可能になります。また、対面コミュニケーションと異なり、自分1人で文章を書くため、メッセージは自分に向かう独白のような性質を帯びることが多くなります。まさにこのブログなんかがそうです。

 

(iii)同期性の様々な程度

LINEなどのチャットは同期的コミュニケーションですが、ブログは非同期的です。Twitterはその中間でしょうか。LINEなどはやり取りの中ですぐに情報を訂正し相手に伝えることができますが、ブログではそれが難しいです。

 

(iv)情報の付加

文章に絵文字や顔文字をつけることで、情報を付加することができます。しかしこれは対面コミュニケーション時の表情や口調と必ずしも同じ効果を持つわけではありません。送り手が自分で制御することが可能だからです。他にも画像や動画をつけることでさらに情報を付け加えることができます。

 

(v)発信の即時性、一斉性

何か面白いことを見聞きした時、Twitterで呟けばその場ですぐにフォロワーに伝達することができます。これは友達と直接あってから話すよりも格段に早いです。その場で発信するにせよ、じっくり練るにせよ、親しい友人に限らず多くの人に一斉に即時的に情報が伝わります。

 

以上のネットの特徴を踏まえた上で、ネットでは悲劇を偽る系の嘘が頻繁に起きていると指摘しています。実際に、ネットで架空の女性Kを名乗り人気を集め、ある日とある人物TがKは亡くなったと情報を流し、Kのファンの同情を集めましたが、後日Kというのは嘘の存在で、年齢も性別もでっち上げだったことが判明しました。さらにTはKの中の人の自作自演だったのです。このような嘘は対面関係で起こることはまずないでしょう。そんなことをリアルの世界でしたら一瞬でバレてしまいます。他にも難病の娘が亡くなった等の虚偽の書き込みがネットで多くの同情を誘った例はたくさんあります。

 

 

 

先ほど書いたネットの非同期性により、自分で何かを発信する際、じっくりと文章を考えることができます。さらに視覚的匿名性により言動が普段の自分と異なっていても他者から奇異に思われることはありません。そのため、直接会話することが苦手な人でも、ネットではじっくり言いたいことを考えることができます。対面では恥ずかしくて言えないようなことも、ネットなら言いやすいのです。

 

ここで現れる自分の姿は、普段の自分とは異なる場合も十分あり得ます。その異なった自分こそが、ネットで作り出された新しい自分なのです。

 

このような新しい自分が日常生活の自分と異なる時、人に対して嘘をついていることになるか、これは対人関係によって変わってきます。

 

 

ですがネットに現れる新しい自分は、これまでリアルで示す機会がなかっただけで、真の自分の一面であることは間違い無いのです。

 

 

以上の点を踏まえて先ほどのキリトかなツイートについて考えると、

 

(i)まず中の人は自分をキリトに似ていると思っている。

 

(ii)しかし日常生活でそのことを伝えられる友達がいない。もしくは言っても誰も納得してくれそうにない。

 

(iii)Twitterならフォロワーは普段の自分を知らないため実際似ているかどうか誰もわからないので、とりあえず呟いても問題ないだろうと思って呟いた。

 

という可能性があります。

 

結果として彼はイキリオタクとして吊し上げられてしまいましたがそれはたまたま運が悪かっただけで、ネットで自分を誇張するというのはみなさん経験があるはずです。

 

 

それにこのツイートをした本人が本当にキリトに似ていて、DQNをぶっ飛ばし、アスナ似の彼女がいるという可能性もゼロではありません。

 

個人が特定できず匿名性が守られている間は、何を言っても憶測にしか過ぎません。

このツイートを叩いた人たちは、アニメオタクはこんな美男ではない、腕っ節が強いわけないという偏見に基づいて憶測で叩いているだけです。

 

とにかく何者にでもなれるネットの世界においては、誰もが大きい小さいに関わらず嘘をついています。その真偽を見破るのは難しく、自分も日常的に嘘をついている以上、安直に批判するのは危険なのではないでしょうか。

 

 

知らんけど。 

 

悪意の心理学 - 悪口、嘘、ヘイト・スピーチ (中公新書)

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