寝落ちした友人に放置され夜の四谷をひとりさまよった話

 

 

これはまずいと思ったがすでに遅かった。

 

これは九月のある肌寒い夜の話。友人に突然宅飲みしようと誘われた僕はLINEを見るなり支度を整え5分で家を出た。

 

「酔ってる〜」「早く来て〜」とメッセージが送られて来る。ちょうど次の日は予定もなく、誰かと話したい気分だったので僕は誘いに乗った。

 

電車に乗り込んだはいいがすぐ不安になった。さっきまで来ていた返信が全く来なくなったのだ。まずい。

 

間違いなく寝落ちしている。しかし電車の中なので電話をかけるわけにも行かない。時すでに遅し。僕は大人しく電車に揺られた。

 

このとき時刻は21時。さすがに途中で目を覚ますだろうと希望を抱きながら返事を待ったが、結局連絡は来ない。とうとう僕は目的の四谷三丁目駅にたどり着き、一人地上に出た。

 

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四谷三丁目駅に降り立ったのはこれが初めてだった。

 

四谷と聞けば新宿に近いイメージしかなかった僕だが、意外にも新宿に近いにも関わらず高層ビルが建ち並ぶといった都会ではなく、ごく平凡な僕の地元にも近いような風景が広がっていた。

 

いや、そんなことはどうでもいい。今僕は友達を待っているのだ。しかし未だに返信は来ない。時刻は21半時を回った。先ほどから電話をかけているが全く反応がない。しかばねのようだ。

 

僕はこの友人に会うために、わざわざ家を飛び出し四谷三丁目に来たのだ。
風呂にも入りさてのんびりしますかと着替えている最中に飛びこんだLINEに即座に反応し家を飛び出し電車を乗り継いで来たというのに寝てるとは何事か。このまま俺はどうすればいいんだ。そんな混乱の中、家路を急ぐサラリーマンを眺めていた。

 

そうしている間にあらゆる手を尽くした。LINEで鬼電をし続け、メッセージも送りまくったが無駄だった。確実に寝ている。

 

 

 

ちなみに僕は彼の住所を知らなかった。これは飛んだ誤算だった。まさか寝落ちしてるだなんて予想だにしなかったが、せめて住所でも聞いておけばよかったと今更後悔する。

 

さてどうしようか。とりあえずシラフではやっていけないということに気がつく。神様仏様中島様と称されるほど穏やかなことで有名な僕だが、さすがにこのままじゃブチぎれてしまいそうだ。

 

ファミマに駆け込んだ僕は最近流行りのサッポロチューハイ99.99を買い一気に飲み干した。一本207円。たったこれだけで天国に行けてしまう。実は最近これにはまっていてよく一人で公園で飲んでいたりする。とてもお行儀が悪い。

 

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僕はとりあえず酒を飲み、四谷三丁目を散歩することにした。

飲み干してから3分が経過した時点でかなり酔っ払ってしまっている。頭の中が揺れ視界は歪み、不思議と気分が高揚してきた。

 

もともと人の目はあまり気にしない僕だが、おそらくこの時は変質者のように街をさまよっていただろう。僕のそばを大人が通り過ぎていったが、おぼつかない足取りでふらふらと歩く僕をみて不審に思ったに違いない。いや、そんなの日常茶飯事なのだろうか。僕が住む地域は治安が良くなく酔っ払いがいたるところに倒れ、嘔吐しているのだが四谷の街もそうなのだろうか。まあそんなことはどうでもいい。

 

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実はこの記事は酔っ払ってる状態の時に音声入力したものを元に書いている。つまり僕は独り言を言いながら四谷の街を歩いていたわけだ。右手に酒、左手にスマホでブツブツ言いながら歩く酔っ払いと化していたということだ。とてもよくない。

 

 

 

気がつくと時刻は間も無く22時になろうとしていた。ここまできてまだ夜ご飯を食べていないことに気が付いた。かすかに残る意識を頼りに駅まで戻り、交差点にあったなか卯に入る。適当に注文を終え席に着く。さすがに酔っていては迷惑なのでありったけの意識を集中し、平静を装って店に入った。

 

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当然ながらここでも電話をかけた。このままではわざわざ四谷三丁目までなか卯で親子丼とうどんを食べに来たことになる。それでは終われない。

 

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しかしそんな僕の気持ちをよそに、電話は全く繋がらない。仕方なく親子丼とうどんを平らげた僕は再び四谷散歩に繰り出した。

 

 

しばらく歩くと聞いたこともない神社の案内が出てきてとりあえず右に折れた。しかし歩けど歩けど何にもたどり着かないため仕方なく左に折れ、そしてまた左に折れ、大通りに戻ることにした。

 

なぜこんなに写真を取っているのかというと、途中からこの体験を記事にでもしなきゃやってらんねえことに気が付いたからだ。僕はブロガーだ。何か体験をしたら記事にするという義務がある。いや、そんなものはない。ないけどわざわざこんなところまできて「はい、帰りましょう」で終わらせるわけには行かない。せめてこの体験を記事にでもしなければ電車代が報われない。そうだそうだと胃に入った親子丼も頷くのが聞こえる。

 

いつしか缶が空になっていた。無論友達から連絡は来ない。酔いが覚めては待つに待てんと再びファミマに入り、今度は黒を買った。この99.99。アルコール臭さがほとんどない。同じくアルコール度数の高いストロングはちょっと匂いがきついのだが、こちらはグイグイいける。グイグイいけてしまうから恐ろしい。

 

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ふたたび缶を開けぐいっと飲むと一層世界が歪み始めた。あてもなく彷徨う。自分の影を追いながら角を曲がり、歩いては曲がり、曲がっては直進し、直進してはまた曲がり。

 

 

 

思い出したように友人に電話を掛け直したりもしたが反応はない。

 

 

さすがに疲れた。足が痛い。一旦休もうとしたところちょうど座れそうな一角を見つけ腰を下ろす。酒片手にスマホに向かって話しかけている僕は不審者そのものだが許してほしい。あなたも人には分からない闇を抱えているのと同様、僕には僕の地獄があるのだ。お互い歩み寄ろうではないか。怪訝そうな顔でこちらを見ながら通り過ぎる大人の視線を感じながらそんなことを思う。

 

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しばらくしてよっこらせと立ち上がり、再び歩き出した。

 

 

そうこうしているうちに時刻は23時を過ぎ、どこのお店も閉まっている。

 

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急に寂しくなってきた。人通りも少なくなり僕の脇を通り抜ける車以外には音を立てるものもない。

 

いつしか公園に僕はいた。滑り台の斜面に横になり、心地よい酔いに身を任せている。

 

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なぜこんなところにいるのか、なぜ一人で酒を飲んでいるのか思い出せない。友達がこない怒りもすっかり何処かへ消えていた。

 

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ふと周りを見渡すと公園にいるのは僕だけではなかった。ひとりスマホをいじる同じくらいの歳の男や、くたびれた様子のサラリーマンが肉まんを食べていた。

 

 

はっとスマホを見ると、終電の時間が迫っていた。タイムリミットが近い。

このまま何もせずに帰るのは嫌だが、仕方がない。せっかくだから渋谷のクラブにでも行って朝までいるかとも思ったが万全とは言えない体調で行って風邪を行くのも嫌だ。

 

 

 

ここでひとり朝を迎えるのも悪くはないが、わずかに残った判断力と相談した結果、大人しく帰ることにした。

 

酒に酔っているため判断までに時間がかかったらしく、腰をあげる頃には終電まであとわずかだった。こりゃいかんとありったけの意識を足に集中させ、夜の四谷を駆け抜けた。変な汗が出る。僕はここに何をしに来たのだろう。走りながら、遠くに見える新宿の高層ビルを眺めながら、ひとり僕は駆けた。

 

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ギリギリで電車に滑り込み、何事もなかったかのように椅子に座る。

友人からの返信は、ない。

寝落ちした彼の前で、僕は完全に無力だった。

 

己が背負った理不尽な完全敗北の事実を受け入れられないまま電車は動き出す。

 

今度会ったボコボコにしてやろう。

 

走って血がめぐりさらに酔いが回り世界が再び回りだしたなか、そんなことを考えた。

 

最寄に着いたとき、今日の夜はなんだったのかと、どうしようもない無力感に襲われた。

僕は全く悪くない。なのに背負わされたこの謎の喪失感。

 

今度酔ってる相手の家に向かうときは、住所を聞いておこう。

 

一夜を無駄にした償いと全く釣り合わない教訓を得た。

 

家に帰った僕はすぐにベットに横になり、朝まで眠った。

 

どんなに頑張っても5時間しか連続で眠れない僕は6時に一度目が覚めた。

 

スマホを開くが、彼からの返信はない。よほど酔っていたのだろう。

 

お手洗いに行き再びベットに横になる。まだ酒が残っているのか頭がいたい。

 

もういい。何もかも忘れよう。

 

気持ちいいとは言えない二度寝をはじめ、次に起きた時にはすっかり日が昇っていたが、彼からの返信はなかった。

 

 

 

 

 

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