先日、とあるテレビ局のアナウンサーのインターンに参加してきました。
僕自身は本気でアナウンサーを目指しているわけでは無いのですが、何事も経験だと、アナウンサーのインターンに参加した経験のある人生とそうじゃ無い人生だったら前者の方が面白そうだと思い申し込んでみました。
実際に周りにアナウンサーを目指している友達が何人かいたので、エントリーシートを見てもらったり、写真を選んでもらったりし、かなり時間をかけ本気で申し込みました。
特に大事なのは、やはり写真だそうです。僕自身そんなアナウンサーになれるほどの見た目ではありませんが、女子アナを目指している友達曰く、男性アナウンサーはとにかく爽やかさが大切だと、何枚か写りがよく見える写真を選んでもらい応募したところなんとか通り、六月某日、実際にテレビ局に赴き一日インターンに参加してきました。
今日はそんな未知のアナウンサーのインターンについて、そしてそこで学んだ伝えることの大切さについて書いていこうと思います。
1. そんじょそこらでは見かけない美人たち
集合場所の局のロビー。僕は集合時間の10分前に到着しましたが、すでにほとんどのインターン生が到着していました。
何よりも驚いたのが女性陣の美しさです。
そんじょそこらでは見かけないレベルの美女が姿勢を正してまっすぐ立っているではありませんか。
さすが未来の女子アナの卵。すでに輝いています。
この目の保養になりすぎるくらいの経験ができただけでも来た価値があったってもんです。
対する男性陣はみんなスラッとしたスーツ姿の好青年ばかりでした。しかし”服装自由”を鵜呑みにした僕はユニクロのポロシャツで来てしまい、完全に浮いてしまいました。
まあいいでしょう。この方が目立つってもんです。見た目では遠く及びませんが、アホみたいに筋トレしている僕は体格だけは自信があります。見た感じみんな細身でシャキッとしています。よし、俺が一番強い。どうせ来たんなら爪痕残して帰りてえ。逆に燃えてきました。
時間になると担当の方が迎えに来てくれ、入館証をもらい、ピッとゲートに通して中に入りました。
2. 戦いはすでに始まっている
会場に通されるとびっくり。いつもテレビで見ているアナウンサーの方が出迎えてくれました。
「ようこそ!〇〇へ!」
と笑顔で声をかけていただいたのですが、その声の通ること。やっぱりテレビで聴くのと生で聴くのとは全然違います。
そして生で見る女子アナの方々はとてもテレビで見てるのと同じくらいきれいでした。そして男性アナもかっこよく、ハキハキしていました。
そしてあらかじめ決められた席に着き、今日の説明を受けました。
そこで「この中でアナウンサースクールに通ってる方はいますか???」と聞かれました。
なんとびっくり、ほとんどの人が手を挙げていたのです。
僕は一番後ろの席に座っていたのでよく見えたのですが、率にして95%の人が手を挙げていました。戦いはすでに始まっているのです。
説明によれば今日はそういう経験がない人でも大丈夫だということでしたが、それでもやはり不安でした。
実際にインターンが始まり、発声練習などをしましたが、僕には初見のことばかりで戸惑いました。
例えば50音の発声練習。通常のアイウエオ、濁音、半濁音に加え、
「か° き° く° け° こ° 」
というカ行の半濁音というものがありました。一体どう発音するのか分かりませんでしたが、アナウンサーの方が丁寧に説明してくれました。
イメージとしてはガ行の音の前に小さく「ん」をつける感じで、
「んが、んぎ、んぐ、んげ、んご」
と発音します。鼻濁音と呼ばれる音だそうです。
他にも
「竹屋の竹薮に竹立てかけたのは,竹立てかけたかったから,竹立てかけた」
「青巻紙赤巻紙黄巻紙」
といった早口言葉をみんなで言ったりしました。やはり周りのスクールに通われてる方たちは見事なもので、大きな声で全く噛まずにスラスラと話します。
僕自身人前で話す機会は多いため何とかなるだろうと思っていたのですが、僕がするスピーチなどは自分のアイデアを伝えようとしているだけで、言葉自体の美しさや、発音にまでは注意が回っていません。こう丁寧に言葉を発して見ると、きれいな声で言った方がもちろんスッと内容が入ってくることに気がつきました。うん、これはとても参考になる。
とはいえやはりアナウンサーというのはかなり特殊な仕事ですので、スクールに通うというのは必須条件なようでした。局の方はアナウンサースクールに通わなければ採用されないということは決してないと言ってましたが、アナウンサー試験で実際に話す様子が採点される以上、通っておいて損はないと思います。ただ学費はかなり高いので、やるからには本気でやらないといけないと言った印象を受けました。
3. 本当の自分ってもんを見せてくれ
ここまではみんな一斉に発声し、原稿を同時に読むなど同じことをしてきましたが、最後に自己PRの時間がありました。
実際にカメラの前に立ち、45秒という時間を与えられ自分をアピールするというスタイルで、事前にこれをやるとは伝えられていなかったのでその場で内容を考えるしかありません。
幸い女子からのスタートで僕の順番はだいぶ後でした。
「では早速名前の順に早速行きましょう。それでは〇〇さん。」
いきなり呼ばれた女の子はかなり緊張した面持ちでカメラの前に立ちました。
「5秒前...」
残りの3,2,1は指でカウント。さあ勝負の45秒の始まりです。
さすが、スクールで鍛えられたであろうアドリブ力を発揮し、彼女はスラスラと話し出しました。
今は地元の観光大使を勤めていて、今までこんなラジオに出演したことがあるなど。輝かしい経歴をつらつらと話します。ところが最後の10秒くらいで頭が真っ白になったのか、無言のまま終わりを迎えました。
やっちまったという顔の彼女。小走りで席に戻ります。
それからも続々とスピーチが行われました。
みなさん輝かしい活動歴をお持ちのようで、特に野球場のビールの売り子をしていたり、ミスコンの出場歴があったりと、やはり人前で活躍した経験のある方が多かったです。
しかし途中でセリフを飛ばしてしまったり、大幅に時間をオーバーする人も多く、いかにこういった緊張する状況で話すことが大変かが伝わってきました。
僕は必死に何を言うかを考え、他の人のスピーチと同時に口パクで話し時間調整しました。そして回ってきた出番。
僕は人前で話すことにはだいぶ慣れている方なのですが、流石に緊張しました。少しでも慣れている感を出そうと姿勢を正し、彼らに負けないようインパクトは弱いながら部活の成績や大学でやっていることなどを話しました。
喋りながら自分の視線がセリフを頭の中で追おうと右上に向かい、カメラを直視できていないことに気がつきました。どうにか真正面を向きたいのですがセルフを追うのに精一杯で余裕がありません。
そのまま何とか用意したセリフを噛まずに言い切りタイムアップ。やっぱり難しい。何とも不完全燃焼な感じがして悔しかったです。
他の男性陣は体育会に所属している人が多い印象でした。やはりスポーツマンが求められているのでしょうか。ハキハキと堂々と話す姿がとても印象的でした。
そんなわけで全員の録画が終わり、現役アナウンサーの方の講評が始まりました。
耳に飛び込んできたのは意外な一言でした。
「はっきりいってこの場でいかにうまく話せるかについては私たちは気にしていません。」
「私たちが見たいのは本当のあなたたちの姿です。スクールに通えばアナウンサーになっていなくとも、カメラの前でそれっぽく話すことは誰だってできるようになります。」
「だからいかに噛まずに上手に話そうとも、特にいい評価をもらえるっていうわけではないんです。付け焼き刃のテクニックは求めていないんです。」
「むしろあなたたちの本当の姿はセリフを飛ばしたりだとか、噛んだりした時に現れるんですよね。こういう緊張する舞台でセリフを飛ばした時、どう対処するか。黙ったままなのか、笑顔を作るのか、セリフなんて捨てて自分が思ったことを素直に言うのか。そういうところを見たいんです。」
「それに本当の性格っていうのはカメラが回ってない時にこそ出たりします。例えば今回、実際にカメラの前に立ってもらいましたが、我々はもちろんあなたたちが席をたち、カメラの前で準備し、終わった後どんな顔をしているか、席に戻るまでどんな様子なのかまで見ています。」
「カメラがオフになった瞬間フッと真顔に戻ったり、険しい顔をして席に戻ったりしたら少し怖いですよね。この子はちゃんとよろしくお願いします、ありがとうございましたを言えているのか。そういったところまで見られているわけです。常に何万という人の目に晒される仕事なわけですから、常に自分の振る舞いには注意しなくてはいけません。」
「さらに言えばあなたたちの経歴もあまりプラスにはなりません。ビールの売り子で歴代一位の売り上げを記録した、とか甲子園に出たとか。経歴を並べられてもあなたが何を思い、どう行動したのかが見えてこない。」
「私たちが知りたいのはそこなんです。その素晴らしい成績を残せた理由は何なのか。どういうことを考えてなぜアクションを起こしたのか。そこにあなたの人となりが隠されていて、私たちはそれを知りたい。」
「だから全国的な賞を取っただとか、そういう成果の大きさっていうのは全く関係なくて、例えば鉄道が好きで全国を回ってるとか、あるアイドルが好きでそのことについてなら誰にも負けないとか。多くのことを羅列するんじゃなくて、自分が誰にも負けない情熱を捧げたことについて熱く語った方が自分をアピールすることができると思うんです。これはこの職業に限らず、他の企業でも同じことです。」
「何でそこまで人柄を大事にするのかって言うと、テレビ局って言うのは家族みたいなものなんですよ。特にアナウンサーという職業は一旦なったらその局で引退するまで働くのがほとんどです。だから採用した人とはこの先20年、30年と同じ環境で働くわけです。」
「だから私たちは、面接であなたについてできる限り知って、この人とならずっと楽しく仕事ができそうだって思える人を採りたいんです。そこには容姿とか現時点での上手さはあまり関係がない。だからみなさんは、今一度自分とは何なのかについて考えて、技術とかは一旦置いておいて、ありのままの自分を伝えられうようになってほしい。そしていつか、私たちと一緒に仕事をしましょう。」
そういうことか。
どんなにうまく話そうとも、輝かしい経歴を並べようとも、自分はどんな人間なのかが見えてこなければ真のアピールにはならない。
確かに技術は大切だけど、そんなものは入社してから何とでもなる。とにかく今は自分とはどんな人間なのか見つめ直し、それを不器用でもいいから伝えられるようになりなさい。
本当の自分ってもんを見せてくれ。
僕は伝えることを天職としている方々から、どんな仕事にも通ずる大切なことを学んだ気がした。
そんなわけでアナウンサーのインターンは終わり、エレベーターに乗って階下に降りた。
心なしか空気がピリついている気がした。誰も口を聞かない。僕らは互いにライバルなのだ。馴れ合っている場合ではない。
最後に挨拶を軽くかわし、僕らは各々帰路についた。
中にはタクシーをその場で捕まえたり、家から高級車で迎えが来てる人もいて興味深かった。
もちろんそんな良家の育ちでもない僕はトボトボ独り歩き駅に向かった。
一体どうなるかと不安だったがとても貴重な経験ができた。
どんな職業に就こうとも、伝える力は欠かせないものだ。
そんな大切な力についてその道のプロフェッショナルから話を聞けたのは幸運だった。
これからもブログ、そしてリアルの世界でも伝えることを大切にし、真っ直ぐに活動していこうと思う。