金曜日、衝撃的なニュースが飛び込んできた。
ーELLEGARDEN復活。
Twitterでその情報を得た僕はあまりの驚きにしばらく動くことができなかった。
そしてポケットにあるiPodを取り出し、彼らのファーストアルバム"DON'T TRUST ANYONE BUT US"を再生した。
ー音楽は人生の目次である。
昔、誰かがこんなことを言っていた。
その言葉通り、イヤホンから流れてくる彼らの歌は、僕の十代の頃の記憶を蘇らせていくのであった。
☆☆☆☆☆☆
僕とELLEGARDENの出会いは偶然に起きた出来事だった。
中学三年生の頃、初めてiPodを手に入れ、音楽を好きな時に好きな場所で聴ける喜びを知った僕は、街のレンタルCDショップにいき、好きなバンドのCDを借りまくった。やがてお金がなくなり、僕は邦ロック好きな従姉妹にお願いして、彼女のWALKMANに入っている曲を片っ端から入れてもらったのだ。
その中の一つがELLEGARDENだった。
僕はずっと別のバンドがずっと好きで、CDを全部借りて、ライブにも行くくらいはまっていた。だから他のバンドの曲なんて全然聞かなかったのだけど、せっかく借りたんだからと従姉妹がくれた曲を聴いてみたのだった。
確かその時入っていたELLEGARDENのアルバムは”ELEVEN FIRE CRACKERS”だったと思う。
英語の曲ばかりで、初め僕はELLEGARDENはアメリカのロックバンドか何かだと思っていた。中学生だった僕は英語の歌詞なんて1ミリもわからなかったけど、爽快感あふれるメロディに惹かれた。そして日本語の歌はそのまっすぐな歌詞、強烈なギターとベースの音、耳に残る旋律に心を奪われ、すっかりELLEGARDENの虜になった。
”ELLEGARDENが一番好き!!!”
とまではならなかったけど、三番手くらいには頻繁に聴くバンドだった。
やがて高校に入り、音楽の趣味もだいぶ変わった。今までは邦ロックこそが至高!とばかり思っていたけど、環境が変わり、付き合う人も変わり、僕の趣味嗜好も徐々に変わっていった。
そう、まさに音楽は人生の目次なのだ。
男子校に入った僕はこの記事に書いたように、次第にオタク文化にハマっていった。
いつの間にかiPodはボカロとアニソンでいっぱいになり、カラオケにいっては男子高校生では到底出せっこない高い音を要求する初音ミクの曲を喉が枯れるまで歌いまくった。
あんなに聴いていた邦ロックは忘れ去られ、一番好きなバンドのライブにかろうじて行くくらいで、ELLEGARDENの存在など頭の片隅にもなかった。
それから数年、僕は再びELLEGARDENとの再開を果たす。
それは僕が高校を卒業してから9ヶ月たった12月のことだった。
そう、僕が浪人まっただ中の頃だ。
☆☆☆☆☆☆
もうこのブログで散々僕の浪人時代の思い出を書いてきた。偉そうに過去にこだわるなとなんども言ってきた僕が何度も浪人時代の話をするなんて矛盾だと思われるかもしれないが、改めてあの時を思い出すとやはり学べることがたくさんあるのだ。
だから今回もどうか我慢して読んでみてほしい。
僕がELLEGARDENとの再開を果たしたのはセンター直前の12月後半。予備校の授業も終わり、家庭研修期間に入ってからのことだった。
多分どこの高校もそうだと思うけど、高校三年生は12月後半には学校の授業が終わって、受験に向け家庭研修期間に入る。予備校もそうで、1月からは冬季講習をとった人だけ予備校へいくといった具合だった。
僕は昔から人の話を聞くのが苦手で、確かに1年間予備校講師の授業を必死に聞いて学力はついたが、演習がメインになる冬季講習を取るくらいなら家で過去問を解いた方がマシと考え、ほとんど12月以降予備校へ行かなかった。
朝7時に起きて1時間勉強。ニュースをみながら朝ごはんを食べ8時半には近所の公民館へ行き、12時半まで勉強。そこから一旦家でお昼を食べ、午後は近くのカフェで軽く昼寝をしてから勉強。夕方18時に帰宅し夕食を食べ、その日のコンディションで家、または再び公民館で22時まで勉強。お風呂に入り軽食を食べ少し暗記ものに取り組んだのち、0時には就寝。
そんな面白みのない灰色の毎日を一月、二月と繰り返し続けた。
あまりに退屈な毎日。勉強嫌いの僕にとって拷問とも言える日々の癒しになるものといえば、音楽しかなかった。
僕は勉強中は音楽を聴く派だ。いいのか悪いのか分からないが、だんだん調子が出てくるとリズムが生まれてきて、音楽に合わせて拍子をとったりして気持ちをあげてた。
ただ家庭研修期間はあまりに長かった。一日8 時間も好きな音楽を聴いていたら飽きがくる。早々にボカロもアニソンも、お気に入りのバンドも聴き尽くした僕は全曲シャッフルモードに切り替えた。
いつもとは違うアーティストの歌声に新鮮さを覚えた。そして懐かしのメロディが耳に飛び込んできた。
そう、それがELLEGARDENだった。
久々に聴いた彼らの歌は、浪人で磨り減った僕の心を癒し、勇気をくれた。
特に僕が気に入ってる一曲がこれだ。
冒頭で触れた彼らのファーストアルバム"DON'T TRUST ANYONE BUT US"に収録された45というタイトルの曲で、2011年に公開されながら再生回数1万に満たないことからわかるように、ELLEGARDENの代表曲ではない。
ただこの4分34秒は僕の浪人生活のために書かれたんじゃないかってくらい当時の僕の胸に響いた。
歌詞が全部英語なので、一部和訳したものを引用しよう。
ところがタイヤはパンクして
ガス欠にもなりかけていて
外ももう真っ暗になっているのに
ヘッドライトの明かりも落ちてしまって
地図は古すぎて
僕らには
今いる場所さえわからない
でも行かなくちゃ
僕らならきっと到着できる
<引用元>
あの頃の僕は、毎日がむしゃらに机に向かっていた。
迫り来るセンター、私大受験、二次試験。全然楽しくない受験勉強を、将来の夢のために歯を食いしばって毎日毎日ペンを握る日々。
暗闇の中を手探りで進む日々。
心はパンク寸前、体力も消耗し、自分のやり方が合っているのかさえ分からなかった。
それでも僕はやらなくてはならない。前に進まなくてはならないんだ。
45の歌詞はそんな僕に勇気をくれた。
僕は試験の前、必ず45を聴いた。
センターも、私大受験も、二次試験の時も。
最後の受験が終わった帰り道。受験生として最後の45を聴いた。
辛かった時、悔しかった時、悲しかった時。いつだってこの曲を聴いていた。
この数ヶ月のいろんな思い出が蘇り、僕は泣きながらiPodを握りしめた。
We don't need these maps anymore
地図なんてもう必要ないさWe are quite sure of Where we are now
自分たちの居場所はわかっているWe are sure to make it
きっとそこへたどり着けるさ
ありがとうELLEGARDEN。僕は何とか受験を終えることができた。
僕がどこにいるのかも、これからどこへ向かうのかも、少し見えてきた気がした。
☆☆☆☆☆☆
ELLEGARDEN復活のニュースを見ながら、僕はそんなことを思い出していた。
音楽は人生の目次である。
久々に聴いた45は、僕にほろ苦い19才の冬を思い出させてくれた。
少し寒い五月の晩。つい最近まで冬だったことを思い出す。
iPodでELLEGARDENを聴きながら僕は歩く。
ツアーのチケット、取れたらいいなあ。