人生はチョコレートの箱、開けてみるまで中身は分からない
これは映画フォレスト・ガンプの有名なセリフだ。
人生は何が起こるかわからない。
自分が経験したことのない未知の世界に飛び込むことほど、ワクワクすることはない。
そう思った僕は先日の金曜日の夜、一人で人生初のクラブに行ってみた。
21時
六本木に降り立った僕は、事前に調べたクラブが固まってる一帯に向かった。
よく通う人ならわかると思うが、21時から営業しているクラブなどほとんどないし、人もほとんど入っていない。クラブが盛り上がるのは深夜2時くらいの時間帯だ。そんなわけでまだまだ人が少ないとおりを一人歩き、たまたま営業しているクラブがあったので入場料を払って僕は中に入った。
中に入ってまず、爆音が鳴り響く薄暗い室内に圧倒された。華やかな照明、タバコと香水が混じった匂い、体を震わす重低音。全てにとってが僕の初めてだった。カウンターでジントニックをもらい、一人酒を飲む。
店内を見渡すと、本当に外国人しかいなかった。これは六本木という街の性格からなのだろうか。100人は入りそうな店内に10人ほどしかおらず、友達できたような感じだった。
いい感じにお酒が回ってきた僕は、酒の勢いで手当たり次第周りの外国人に話かけまくった。
"Hi ! My name is Hiroshi ! Where are you from?"
"Why did you come Japan?"
大して英語が話せるわけではないが、ジェスチャーとノリで乗り切り、5人くらいと友達になった。アメリカから留学できた人、ドイツから仕事できた人、ミャンマーから寿司を習いにきた人、ブラジルから恋人に会いにきた人、いろんな人がいた。僕は特に、香港からきた留学生と仲良くなった。
彼の名はパウエル。香港の大学で政治を学ぶ未来ある学生だった。その日は東京にきた初日で、それまで北海道、新潟、静岡、京都、大阪などなど、日本中を旅していたらしい。同じアジアの血を引くもの同士親近感を覚えた我々はしばらく語り合った。
英語の勉強をずっと続けていて、今はペラペラになったこと。日本人の彼女がいること。日本の政治はよくないと感じていること。将来は政治家になりたいこと。来年はアメリカに留学に行くこと。富士山にとても感動したこと。たくさんのことを教えてくれた。
なかなか楽しいじゃないか。普段大学に通ってて、英語系のサークルか国際系の学部にいない限り、外国人と友達になれるケースは少ない。特に僕は理系なので、その機会はさらに少ない気がする。こうして短時間でたくさんの国の人たちと語り合えただけでここに来た価値は十分あるだろう。
そしてそのあとパウエルと別れ、いつの間にか近くにいた陽気な日本人のお兄さん二人組と仲良くなった。
今度の二人は幼馴染だそうで、25歳だった。名前はカケルさんと、マナブさん。カケルさんは社会人だが、マナブさんはまだ大学生ということだった。
二人は小学校からの付き合いで、小学生の時は毎日、中学生の時も毎日、高校生の時は学校が別だったけど週一、今はお互い立場は違えど週一であっているという大大大親友だ。今日はクラブに通い詰めているカケルさんが、ナンパしたいけどクラブ慣れしてないマナブさんのために手本を見せるという名目で来たらしい。そうかクラブとはそういう場所なのか。
まだ時間も早く女性も少なかったので僕らは3人でお酒を飲みまくり、すっかり気分が悪くなった。僕は今日は朝までいろんなクラブを回ろうと思っていたので、東京のもう1つの聖地、渋谷に向かうことにした。吐きそうになりながらカケルさんとマナブさんに別れを告げ、僕はバスに乗り込んだ。
23時
渋谷に到着。クラブがたくさんある道玄坂を目指して歩く。フラッフラになりながらなんとかボディチェックを済ませ入場。六本木の先ほどのクラブとは違い、3フロア構成の大箱だった。だが如何せん気持ちが悪い。吐きそうだ。メインフロアにいくも鳴り響く重低音が胃にガンガン響く。気持ちが悪い。しかもなんだか治安が悪そうだ。いわゆるDQNみたいな男ばっかりだ。
ー帰りたい
その思いが一瞬頭をよぎった。そうだ今すぐ引き返して電車に乗れ。もう十分収穫はあっただろう。帰ってゆっくり寝て明日に備えよう。
だがダメだ。
今日は朝までクラブにいると決めたんだ。一度やると決めたらこの男中島、最後まで貫き通さねばならぬ。そう決意した僕は一人酒を手に人混みの中に突撃し、もみくちゃになった。
0時
帰りたい
でも終電はすでにない。
なんてこった...この地獄があと5時間続くのか...