「俺もう社会人になるからさ、最後だからいろんなこと体験して見たいんだよ。そりゃ社会人になれば今より金銭面では豊かになるけどさ、若いうちに体力使う遊びしとかんきゃ損だよ金田さん。俺、なんとか大学に入ることができてさ、それなりに楽しく過ごせて、夢も持てたし、すげー幸せなんだ。今日なんか金田さんのおかげで外人とも仲良くなれたし、行ったことのないクラブ開拓できたし、ほんと楽しかったわ。金田さんこんな僕について来てくれてありがとう。町田についたら連絡してね。」
金田でもないし町田にも住んでないけど、なんだかとても嬉しかった。
マナブさんの始発の時間になったので、彼を駅まで送り届けた。
さっき交換したラインに、また今度行きましょう!とメッセージが入る。
もちろんです!また飲みましょう!
僕はすぐに返信した。
さあ帰ろう。もう全身クタクタだ。頭はガンガンするし、足はガッタガタだ。正直オールする必要はなかったな。でも知らない人と、たとえ数十分の友情であっても語り合えたのは貴重な体験だった。こんな日があってもいいだろう。
人生はチョコレートの箱、開けてみるまで中身は分からない
本当にその通りだな。新しいことにチャレンジするって楽しいじゃないか。それに今日仲良くなった人たちはみんな明るかったよな。僕も夢を持って、努力しないとな。
気がつくと井の頭線とJRをつなぐ通路に立っていた。見上げると岡本太郎の傑作、
「明日の神話」が僕を見下ろしていた。
そうだ、俺も神話を作ろう。俺の未来だって希望に溢れている。負けてられねえ。何が”明日”の神話だ。明日やろうは馬鹿野郎だ。神話を作るなら”今日”から行動しなくちゃならねえ。待ってろ世界。今に俺が、お前らをあっと驚かしてやるからな。
始発に乗り込み家に帰る。さっさと仮眠とって9時には起きて勉強しよう。1分だって無駄にはしない。俺の神話を、今日から作るんだ。
家に帰ってベッドに入り、僕は深い眠りに落ちた。
目が覚めると、すっかり夜になっていた。